『目白で5万円』の風呂付きアパート

投稿時間 : 2008年10月08日 08:41

今から30年ほど前、大学生だったころの私は、父の経営する目白の不動産会社でアルバイトをしていました。物件を探していろいろな人が訪ねてきましたが、目白ですから、学生さんも多かったのです。

学生さんの多くは、都心になるべく近く、なるべく安く、できれば風呂付きのアパートを希望しています。でも当時はまだ、都心部で学生さん向けの風呂付きアパートは数多くありませんでしたし、あっても家賃が6万円程度と高めでしたから、なかなか条件に合う物件はありません。学生さんは、しかたなく風呂無しにするか、もっと遠い場所のアパートにするかを選ばなくてはならなかったのです。


アルバイトとして働いていた私は、そんな会話をいつも聞いていて、気の毒に思っていました。と同時に、これはビジネスチャンスなのではないだろうか、と考えたのです。学生さんが無理なく出せる家賃といえば、せいぜい5万円程度でしょう。『都心で風呂付きで家賃5万円は本当に無理なんだろうか?』

都心部の地価は当然高い。でも私は『面積が小さくなれば、その分家賃も安くなる』のでは、と思ったわけです。当時、風呂付き単身者向けの標準的な部屋が、6坪で家賃6万円くらいでした。ということは、6坪で6万円なら5坪にすれば5万円で採算が合うのではないか。

私はこれをどうしても実証したくて、大学卒業後、父に交渉して資金を工面してもらいました。そして東京・目白にはじめて自分でアパートを建てたのです。

私の考えは正解でした。
私が建てた1部屋5坪で5万円の風呂付きワンルームアパートは、広さでいうと狭い部屋でした。でもそれはまったく問題ではなく、常に満室の人気物件となったのです。図らずも、私の考えは当時の常識を覆すことになりました。

その後も私は、既成の概念や見かけにこだわらず、その時代に求められていることにいかに応えられるか、を考えて行動を起こしてきました。
『目白で5坪・5万円』のアパートを建てたことは、私がこの業界で生きることになるきっかけとなったわけです。

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